外付けストレージにもSSDの時代がやってきた。フラッシュメモリといえばサンディスク、の「エクストリーム ポータブル SSD」は、仕事で写真や動画を扱う人達のワークフローを変えてくれるかもしれない。
数年前まで、写真をためておくストレージといえばHDD一択だったなあ、と思うと感慨深いものがありますな。モバイル向けのノートPCですら内蔵ストレージはHDDだったのだから。
10年ほど前、1週間ほど欧州へ旅したときは、撮影した写真をいくつかの媒体で使う約束をとりつけていたので、HDD内蔵のノートPCにバックアップ用の外付けHDDを用意し、毎晩写真をデジカメから内蔵HDDに吸い上げては、さらに外付けHDDにバックアップしてたなあと懐かしい気持ちになる。
でも気がついたら、ノートPCのストレージはいつのまにかHDDからSSDへ移行していたのである(据置前提の大きめの製品を除く)。
わたしが初めてSSD内蔵のノートPCを買ったとき(約8年前)の感想はシンプル。
「は、速い!」
HDDって普段はディスクの回転が止まってるので、アクセスしようとすると立ち上がりのタイムラグがどうしても発生するけどSSDだとそれがないのだ。しかも静かだし、振動にも強い。
当時は容量も少なく高価だったけど、今はさらに時代が進んでるのである。
■外付けストレージもポータブルSSDの時代へ
外付けストレージにもSSDの時代がやってきた。今回手にしたのはフラッシュメモリといえばサンディスク、の「エクストリーム ポータブル SSD」である。
SSDなので、すごく小さくて軽い。頭では分かっていたけど(こちとら日常的にSDカード使ってるわけだし)、実物を見るとやっぱ「軽い!」と思っちゃう。よく見ると周辺は弾力性のある樹脂で、落としても衝撃を吸収するように作られている。メーカー発表によると最大2メートルの高さから落としても大丈夫だとか(最大1500G!)。振動にも強いからクルマ移動も安心。これも大事な点だ。
前モデルより一回り小さくなり、しかもインタフェースがUSB Type Cになった。
インタフェースはUSB 3.1のGen1からGen2に進化した。一見マイナーチェンジのようだが、この2つは転送スピードが大きく違う。Gen1が最高で440MB/秒だったのに対し、Gen2は最高550MB/秒。フラッシュメモリと一口にいってもその読み書きの速度には差があるわけで、エクストリーム ポータブル SSDは速さを追求したモデルといっていい。
PC側がUSB Type-CでもいいようにUSB Type-C同士の短いケーブルが付属するが、アダプタでUSB A端子にも対応している。
USB A側のコネクタがちょっと出っ張るので、別途USB 3.0の高速転送に対応した「USB A-USB Type C」ケーブルを購入して使ってもいいだろう。
で、そのままPCにつなげばOk。
■撮影旅行の頼もしいパートナー
これが1つあるとカメラマンのワークフローにいくつもの変化が起きる。例えば撮影旅行に行った時、ノートPCに画像を吸い上げたら、そのバックアップとしてエクストリーム ポータブル SSDに大事なデータをコピーしておく。そしてPCとは別に保管しておくと安心だ。
小さいのでどこかに置き忘れそう、と思ったらエクストリーム ポータブル SSDのリング部分にカラビナを付けてカバンやリュックに装着すればいい。スマホで所在が分かるBluetooth対応の「紛失防止タグ」系アイテムも付けておくとさらに安心かも。
しかもエクストリーム ポータブル SSDは、頑丈で防じん防滴なのだ。なんとストレージなのにIP55準拠。粉じんの舞う場所でも内部への侵入はなく、いかなる方向からの水(飛沫)を受けても有害な影響が生じない。だから過酷な撮影に持っていっても安心。
水辺での撮影でその場でデータを吸い上げなきゃいけないときも、エクストリーム ポータブル SSDなら安心。
砂が舞ったり雨が降っていたりしても問題なく使える。
その場合、心配すべきはノートPCの方だろう。でも一度エクストリーム ポータブル SSDにデータを吸い上げちゃえば、落としたり濡らしたりしちゃっても、一番大事なデータは保全されるのだ。
旅先ではいつ何が起きるか分からない。ノートPCやカメラは壊したり落としたり盗られたりしても、買い替えたり、保険に入っていればある程度は補償されたりするはずなので、なんとかフォロー可能だ。でも撮影したデータは違う。
旅先で事故や事件に巻き込まれたら、最初に保護するべきは自分自身、2番目はカメラやPCではなく撮影データだ。そういうとき、軽くて薄くて防塵防滴で、濡れても落としても大丈夫なポータブルSSDは欠かせない。
仮にエクストリーム ポータブル SSDを紛失したとしても、見られたくないデータは、専用のセキュアアクセスソフト「SanDisk SecureAccess」を使ってファイルを暗号化しておけば保護される。紛失したり盗られたりはしたくないけれども、いつ何が起きるか分からないのが旅先なので。
もう1つ。エクストリーム ポータブル SSDには、データ復旧ソフト「レスキュープロ デラックス」の1年間利用権が特典として付いてくるので、何かの手違いで撮影データを消してしまった場合でも復旧できる可能性がある。しかもこの利用権、エクストリーム ポータブル SSDの購入から1年間ではなく、使い始めてから1年間有効。何かが起きてからでは遅いとはよく言うけれど、何かが起きてから1年間も使える大変うれしい特典なのだ。
■写真用のメインストレージにも使えそう
いくら薄くて軽くて頑丈だからといって、バックアップ用にだけ使うのはもったいない。額面通りのスピードが出るのなら、メインの写真ストレージとして使うべきなんじゃなかろうか。
というわけで速度を測ってみた。
わたしのメインマシンはMacなので、まずはMac用のディスクスピードテストアプリ「BlackMagic Disk Speed Test」を。
映像機器メーカーが作成したベンチマークなのでそのストレージで映像を扱った場合どのくらいのパフォーマンスが出るか、という表示になっているけれども、とりあえず「読み書きの転送速度」をチェックするべし。
まずはUSB 3.0接続の普通のHDD(回転数が多くない廉価なドライブのもの)がこちら。
まあ速くはないが、普段よく使ってて特に気にならない速度。
では、エクストリーム ポータブル SSDを測ってみよう。
予想以上に速かった。4倍以上。これ、Mac側のインタフェースがUSB 3.1対応なら(うちのは3.0なのだ)もっと速かったのかも。
いやあ一桁違うとは思わなかった。
でも、実使用ではどうなの?
というわけで、11.35GB分の画像データ(実際に小旅行で撮影したもの)を内蔵HDDからコピーしてみよう。
コピー時間を正確に出すために、ファイル同期ソフトを使っている。
まあ、「内蔵HDDから読み出す」時間やファイルごとの転送になるので、あまり差はつかないはず……と思ったらこの結果でした。
なんと2倍以上の差が。
PC本体側がUSB 3.1 Gen 2に対応したUSB-C端子を持っていればさらに快適に使える。
ってことは、これを日常の写真ライブラリ用として使えば、その分画像をSDカードから吸い上げたり画像を開いたり現像したり保存したりが快適になるってことじゃないか。大量の写真をまとめて現像して書き出すとか、すごくいいじゃないか。
モバイル系のノートPCはCPUパワーはけっこう上がってるのだが、ストレージがSSDなので標準モデルでは256GBくらいしかない。写真を保管するには心許ないサイズなのだ。
エクストリーム ポータブル SSDを写真ストレージとして常時つないで使えば、その心配もなくなる。
そしてすごく軽くて薄いので、出先で作業したり撮影旅行へ行くときはノートPCと一緒にバッグに入れて持ち歩けばいいのである。
写真の管理に「Lightroom Classic」を使っているのなら、カタログと写真データの保管場所を両方ともエクストリーム ポータブルSSDのドライブに指定する。そうするとエクストリーム ポータブル SSDの中で作業が完結するし、読み書きも速いのだ。
USB 3.1 Gen2に対応したPCを使っているならなおさらだ。
ついでに、ノートPCの内蔵ストレージは圧迫しないので大量に撮影したときも安心。
SSDは消費電力も少ないのでPC側をバッテリー駆動で使ってもあまり問題にはならないだろう。
この方法のいいところは、帰宅して大画面のデスクトップPCを使うときも、エクストリーム ポータブルSSDをそっちのUSB端子につなぎ替えるだけでOkな点。
カタログも元データも一緒に保存しておけば自宅でそのまま作業の続きを行えるのだ。
PCを買い替えても、つなぎ直すだけなので手間もない。
同時に、自分の作品を入れて持ち歩けば、いつでもそれを見せられる。
ただ、小さくてどっかに置き忘れたりバッグの隅に紛れ込んで行方不明になるかもしれないので、ストラップやカラビナと紛失防止タグは入れておきたいかも。
かくして過酷な環境でも壊れない頑丈なフォトストレージとして、旅行時のバックアップストレージとして、あるいは日常の写真ストレージとして、幅広く使える次世代のストレージなのだ。とくに大量にRAWで写真を撮る人や、4Kで映像を撮る人、しかもスタジオや撮影先で編集したりチェックしたりしたい人にはすごくありがたい製品だと思う。
記:荻窪圭 ITmediaより転載